下請法と請求実務 —
対象となる取引と支払期日の60日ルール

「支払いは納品の3か月後」「今月から単価を下げさせてほしい」——発注元より立場の弱い受注者がこうした条件をのまされないよう、取引のルールを定めているのが下請法(下請代金支払遅延等防止法)です。この記事では、下請法の中でも請求実務に直結する部分を受注者の目線で整理します。なお、従業員を使用しない個人(一人法人を含む)が受注者の場合は、発注者の資本金を問わないフリーランス法が適用され得ます。個人事業主の方はフリーランス法と請求実務 — 支払期日60日ルールと取引条件の明示義務を先に読んでください。この記事は、従業員を雇う事業者や会社間の取引を含む下請法の側を扱います。

下請法の対象となる取引

下請法は、取引の内容と発注者・受注者の資本金の組み合わせで適用が決まります。対象となる取引は、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託(ソフトウェア・デザイン・映像などの作成委託)・役務提供委託(サービス提供の再委託)の4類型です。資本金区分の代表例は次のとおりです。

取引の種類発注者の資本金受注者の資本金
製造委託・修理委託など3億円超3億円以下(個人を含む)
製造委託・修理委託など1,000万円超3億円以下1,000万円以下(個人を含む)
情報成果物作成委託・役務提供委託5,000万円超5,000万円以下(個人を含む)
情報成果物作成委託・役務提供委託1,000万円超5,000万円以下1,000万円以下(個人を含む)

情報成果物作成委託・役務提供委託のうちプログラムの作成や運送・情報処理などの委託は、製造委託と同じ3億円・1,000万円の区分が使われます。取引先の資本金は登記情報や会社案内で確認できるため、主要な発注元が対象に当たるかは一度確認しておきましょう。なお、2026年1月施行の改正で下請法は「中小受託取引適正化法」へと改称され(通称は引き続き下請法)、資本金に加えて従業員数による基準の追加や手形払いの禁止などが盛り込まれています。適用条件の最新情報は公正取引委員会の公式情報を確認してください。

支払期日の60日ルール — 起算点は受領日

下請法の対象取引では、発注者は下請代金の支払期日を、給付を受領した日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に定めなければなりません。ポイントは起算点が検収完了日ではなく受領日であることです。「検収に1か月かかったので支払いも1か月遅れる」という理屈は通りません。

受注者側の請求実務としては、納品日を請求書や納品記録に残し、提示された支払サイトが受領日から60日を超えていないかを契約前に計算します。「月末締め翌々月末払い」のようなサイトは、納品のタイミングによっては60日を超える場合があります。支払サイトの読み方は請求書の支払期日の決め方 — 「月末締め翌月末払い」と振込手数料の負担で解説しています。

POINT 「請求書の到着が遅れたので支払いも遅らせる」という運用も、下請法の考え方とは相容れません。支払期日はあくまで受領日を起算点に定めるものです。とはいえ実務では、請求書の発行が遅れると発注者の支払処理自体が止まります。受注者側も締め後すぐに請求書を発行する体制を作っておくことが、期日どおりの入金への近道です。

禁止行為の概要 — 減額・買いたたき・支払遅延

下請法は、対象取引の発注者に対して次のような行為を禁止しています。

禁止行為請求実務で起こりがちな例
支払遅延定めた支払期日を過ぎても代金が支払われない
下請代金の減額受注者に責任がないのに「協力金」などの名目で請求額から差し引かれる
買いたたき通常の対価に比べて著しく低い代金を一方的に定められる
受領拒否発注した物品や成果物を理由なく受け取ってもらえない
不当な給付内容の変更・やり直し受注者に責任がないのに無償での仕様変更や作り直しを求められる

請求書との関係で特に多いのが減額です。合意のない振込手数料の差し引きや、端数の一方的な切り捨ても、状況によっては減額に該当し得ます。請求額と入金額が一致しない月は、差額の理由を必ず確認し、やり取りを記録に残してください。違反が疑われる場合は、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に相談できます。

請求書まわりで受注者が押さえること

  • 主要な発注元との取引が下請法(またはフリーランス法)の対象かを確認しておく
  • 納品日(受領日)を請求書や納品記録に残し、支払期日が受領から60日以内かを確認する
  • 請求額と入金額の差異を毎月照合し、説明のない減額はその都度確認して記録する
  • 締め後すぐに請求書を発行し、受注者側の遅れで支払処理が止まらないようにする

期日どおりの請求を毎月続ける仕組み

60日ルールを知っていても、請求書の発行が毎月遅れがちでは意味がありません。取引先ごとの金額・支払期日のルールを一度設定して自動化すれば、締め日直後に条件どおりの請求書が必ず送られる状態を作れます。

Maido請求では、取引先ごとに支払期日のルールを設定すると、毎月の請求書が期日入りで自動生成・自動送付されます。送付済みで未入金の請求書は自動で一覧化されるため、支払遅延への気づきも早くなります。

まとめ

  • 下請法の適用は取引の類型と発注者・受注者の資本金の組み合わせで決まる
  • 支払期日は給付の受領日から60日以内。起算点は検収完了日ではない
  • 減額・買いたたき・支払遅延などが禁止されている。入金額との差異は記録して確認する
  • 個人の受注者には資本金要件のないフリーランス法が適用され得る

※ 本記事は一般的な制度の概要をまとめたものであり、法解釈を示すものではありません。下請法(中小受託取引適正化法)の適用可否や個別の取引への該当性は、公正取引委員会・中小企業庁の公式情報をご確認のうえ、必要に応じて弁護士にご相談ください。

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